フランスの国民投票が欧州憲法条約批准を否決
フランスでは、中央ヨーロッパ時間29日午後10時に、欧州憲法条約批准の可否を問う国民投票(レフェレンダム)が締め切られた。出口調査の結果が一斉に公表され、賛成約45パーセント、反対約55パーセントで否決されたことが明らかとなった。
フランスでは、28日に海外領土で投票が始まり、29日に本土で投票が行われた。投票は、原則として中央ヨーロッパ時間午後8時で締め切られたが、パリ市とリヨン市では午後10時まで投票が受け付けられた。
投票率はおよそ70パーセントだった。
フランスのレフェレンダムに、「まさか」は起こらなかった。出口調査の結果は、ほぼ事前の世論調査の結果と一致しており、いわば予想通りの結果だといえる。近隣諸国の政治家の力も借りたフランス与野党の賛成キャンペーンは、まったく功を奏さなかったようだ。
同国のジャック・シラク大統領、ミシェル・バルニエ外務大臣、ミシェール・アリオ=マリ防衛大臣などは、落胆のコメントを発表した。
今回の国民投票により、少なくとも現状によるフランスの批准は不可能となった。したがって、憲法条約の発効も現状では不可能であることになる。憲法条約は、加盟国すべての批准を要求しているからである。
今後は、各国ともとりあえずそのまま批准手続を続行すべきであるというのが、意見としては優勢なようである。今年上半期の理事長国であるルクセンブルクのユンカー首相、欧州委員会のフェアホイゲン副委員長、ドイツのゲアハルト・シュレーダー首相、スペインのサパテロ首相などはこの意見である。
これに対して、他の国は批准手続を中断すべきだとする意見は、少数派である。現在分かっている範囲では、欧州議会のハルトムート・ナッサウアー議員(CDU)やマルクス・フェルバー議員(CSU)程度。今週水曜日に国民投票を控えたオランダのバルケネンデ首相も、「今回の結果によって、オランダ国民が賛成票を投じる理由が増すことになった」とコメントしており、少なくともオランダで国民投票をやめようという動きは今のところまったくない。
したがって、さしあたり各国の批准手続は続行される可能性が高いとはいえるが、その後の処理については決まっていない部分が多い。
仮に、各国の批准手続が続行し、その結果、余りにも批准失敗国が多ければ、今回の憲法条約はお蔵入りになる可能性もある。水曜日のオランダの国民投票でも、現在のところ反対派が優勢であると伝えられており、また、連合王国でも国民投票の具体的な見通しは立っておらず、今回のフランスでの結果を見て、ストロー外相は、国民投票をやるかどうかを熟考したほうがよいとする旨の発言をしている。
反対に、未批准国がフランスだけ、という状況になるならば、憲法条約が発効するようにもう一度レフェレンダムにかけるということになるだろう。
この場合、条約本文に手を加えるかどうかという点が重要なポイントとなってくるが、条約交渉にきわめて長い時間を要したことからも明らかなように、現在の条約本文は各加盟国のきわめて微妙なバランスの上に成立している。したがって、これをすべての加盟国が納得のいくように再交渉を行うということはきわめて難しい。シラク大統領も、この憲法条約を否決して、もっと良い憲法条約が出てくると考えるのは間違いだと強調していた。
したがって、他国での批准手続の結果が惨憺たるものとならない限りは、現在のままの憲法条約で再レフェレンダムという可能性が最も高い。欧州憲法条約の草案を起草したヨーロッパ・コンヴェンションで議長をつとめたヴァレリー・ジスカール・デスタン元フランス大統領や、欧州委員会のジャック・ドゥロール元委員長=フランス=などが、この方向で発言している。
なお、もし、欧州憲法条約の発効が最終的に不可能となっても、現在のニース条約の状態が将来に亘って継続するだけであり、欧州統合が後退するわけではない。しかし、長年の懸案であった、EUの機構改革は果たされないことになるし、欧州基本権憲章の法的拘束力もおあずけになる。条文も、市民に親しみにくいテクニカルな文言の羅列のままだ。これらは、国民にとっても好ましい事態ではなかったはずだが、フランスでは、国民戦線(FN)などのポピュリズム政党の影響力に国民は屈した模様だ。






