欧州理事会総括:日本とのパートナーシップは引き続き強化
欧州経済新聞は、中央ヨーロッパ時間20日、週末に公表されたブリュッセル欧州理事会=16日・17日開催=の議長総括書及び共同宣言の詳細な分析を行った。
議長総括書は、アジアの二国間関係のトップとして日本を挙げ、「欧州理事会は、包括的国際問題と純粋二国間関係の双方において、パートナーシップを構築する意思を確認する(Der Europäische Rat bekräftigt seinen Willen, die Partnerschaft mit Japan sowohl im Hinblick auf die umfassenden internationalen Fragen als auch auf rein bilateraler Ebene auszubauen)」として、EUが、イラク問題や9月の国連総会(安保理改革が予定されている)を含め、国際問題の処理において、日本との関係を引き続き重視していくことを明言した。
また、「欧州理事会は、東アジアの安全保障構造に関する〔日本との〕戦略的対話を構築することを決定した(Er ist entschlossen, den strategischen Dialog über die Sicherheitsstruktur in Ostasien auszubauen)」としており、安全保障の面でも日本とのパートナーシップを重視していくことを明言した。
一方、議長総括書は日本の次に中国についても言及を行い、中国とも対話を深めていくことにより、引き続き戦略的パートナーシップを構築していくことを明らかにした。しかし、同時に、欧中間の「貿易摩擦の早急な解決(eine rasche Beilegung des Handelskonflikts)」に言及したほか、当初予定されていた武器禁輸の解除についても、欧州議会の反対や外相理事会の政治的判断(EU内の反対や、合衆国・日本等EU外のの反対に配慮)を尊重して断念し、代わりに「欧州理事会は、人権問題の対話に大きな意味を認めている(er dem Dialog über Menschenrechtsfragen große Bedeutung beimisst)」との表現を盛り込み、中国の人権状況の改善を求めるなど、欧中関係は引き続き波乱含みであることを印象付けた。
欧州理事会は、EU加盟国の国家首班ないし政府首班と、欧州委員会の委員長が集うトップ会談で、外交及び内政の問題全般について大枠的な政治的決定がなされる。特に、外交については、欧州理事会の総括文書は、EUの外交の方向性を知る上でたいへん参考になる資料となっている。
〔ブルガリア・ルーマニア・トルコ〕
今回の総括書では、冒頭(第2段)で、「欧州理事会は、ブルガリア及びルーマニアの欧州連合加盟への道のりにおいて、新たな重要な前進である、2005年4月25日にルクセンブルクで挙行された加盟条約の調印を歓迎する(Der Europäische Rat begrüßt die am 25. April 2005 in Luxemburg erfolgte Unterzeichnung des Beitrittsvertrags, die einen neuen wichtigen Schritt auf dem Weg zum Beitritt Bulgariens und Rumäniens zur Europäischen Union darstellt)」とし、ブルガリア・ルーマニアのEU加盟(2007年を予定)について何ら変更がないことを強調した。
なお、両国は、以後、能動的オブザーバーの地位を取得することとなり、欧州理事会とその準備(官僚同士の話し合い)に参加することとなる。EUにおいては、加盟予定国を加盟の時点から参加させるのではなく、それ以前の段階から徐々に参加を許していき、加盟予定国の意思をEUに反映させることにしている。前回の拡大時にも、同様の措置がとられた。
次に(第3段)、トルコの加盟については、トルコの加盟に拒否反応を示したフランスのレフェレンダムに配慮し、「トルコ」とは明言せず、「欧州理事会は〔・・・〕拡大に関する2004年6月17日・18日及び2004年12月16日・17日の欧州理事会総括書を想起し、その完全な実施を指示する(Der Europäische Rat erinnert [...] an seine Schlussfolgerungen vom 17./18. Juni 2004 und vom 16./17. Dezember 2004 zur Erweiterung und weist darauf hin, dass sie vollständig umgesetzt werden müssen)」と、婉曲的な表現を用いたが、実質的には、トルコの加盟を引き続き推し進める内容となっている。
フランスのレフェレンダムでは、国民戦線(FN)などのポピュリズム政党が、欧州憲法条約とEU拡大(特にトルコの加盟)を牽強付会に結び付けて、欧州憲法条約の否決を煽った経緯があり、実際に、トルコの加盟が反対票の理由となったことがその後の調査で明らかとなっている(参考記事)。
しかし、欧州理事会は、このような主張に対してはあくまで応じない構えを見せ、トルコを含めたEU拡大をEUの第一の重要課題と位置づけた。
かつてキューバ危機の際に、旧ソ連側が、アメリカがソ連に向けた原子ロケット弾をトルコに配備していたことを指摘したことからも明らかなように、トルコは、対コーカサス及び対ロシア関係における重要な戦略拠点であるほか、シリア・イラク・イランと隣接しており、対中東関係でも重要な拠点である(昨年の拡大により、EUは既に中東の島国キプロスを加盟国にしている)。
東バルカンのルーマニア・ブルガリアについては、バルカンの安定という側面が大きい。東ヨーロッパ~バルカン半島は歴史的経緯によって民族構成がきわめて複雑で、一歩間違うとすぐに戦争状態になる(例:旧ユーゴスラヴィア)ので、平和なうちにEUに囲い込んで、将来の戦争を未然に防ぐことにしている。なお、ルーマニアは産油国であるが、埋蔵量・産出量ともに多くない(デンマークより少ない)。
〔西バルカン〕
また、西バルカンについても、「欧州理事会は、西バルカンの未来は欧州連合にあると強調したテッサロニキ・アジェンダの完全な履行の責務を確認する(Der Europäische Rat bekräftigt sein Engagement für die vollständige Umsetzung der Agenda von Thessaloniki, in der hervorgehoben wird, dass die Zukunft des westlischen Balkans in der Europäischen Union liegt)」とし、具体的には、マケドニア、セルビア・モンテネグロ(「新ユーゴスラヴィア」が国制変更により2003年に改称したもの)に対して更なる努力を要求しつつ、「可能な限り早急に、安定・連携協定の締結交渉を始めたい(die Europäische Union so bald wie möglich Verhandlungen über den Abschluss eines Stabilisierungs- und Assoziierungsabkommens einleiten will)」として、努力の末に与えられるアメを提示した。ボスニア・ヘルツェゴヴィナについても、「該当する条件がみたされ次第(sobald die entsprechenden Bedingungen erfüllt sind)」同様の措置をとりたいとしたが、実際には依然として余り状況に進展がないことをうかがわせた。
一方、西バルカンのクロアティアについては、旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷(ICTY)への協力を怠っていることから、加盟手続については停止処分となっており、今回の議長総括でも、「この地域のすべての国々のICTYへの協力は、EUへの接近の不可欠な前提だ(die Zusammenarbeit aller Länder der Region mit dem ICTY eine wesentliche Voraussetzung für ihre weitere Annährung an die EU bleibt)」として、間接的にクロアティアを非難した。
また、アルバニアについても、「少数民族が居住する地域を含めて、この国で、国際基準にのっとった、自由で民主的な選挙が行われること(dass in diesem Land - einschließlich der Regionen, in denen ethnische Minderheiten leben - freie und demokratische Wahlen nach internationalen Standards durchgeführt werden)」がEUへの接近の条件だとし、民主化がまったく不十分であることを指摘した。
〔ウクライナ〕
オレンジ革命により民主化を達成し、EU加盟に向けて国内を改革しているウクライナについては、「欧州理事会は、ウクライナ政府による、ウクライナへの真の民主政と社会的市場経済の導入の努力を称賛し、ウクライナ政府が欧州の規範と価値を共有するに至ったことを歓迎する(Der Europäische Rat würdigt die Bemühungen der ukrainischen Regierung zur Einführung einer echten Demokratie und einer sozialen Marktwirtschaft in diesem Land und begrüßt, dass sich die ukrainische Regierung den europäischen Normen und Werten anschließt)」と、賛辞を惜しまなかった。さらに、「欧州理事会は、欧ウクライナ間の対話及びより緊密な連絡を急いで前進させる意欲があり、また、欧ウクライナ行動計画のスピーディな実施を支援する(Er möchte den Dialog und die verstärkten Kontakte zwischen der EU und der Ukraine rasch fortzsetzen und unterstützt die zügige Umsetzung des Aktionsplans EU-Ukraine)」とし、今後の更なる欧ウクライナ関係の緊密化が予想される。
実は、この欧州理事会直前の15日には、欧州投資銀行(Europäische Investitionsbank)がウクライナとの枠組合意に達し、当日の16日には、欧州委員会とウクライナ政府の間の交渉がまとまり、地雷廃棄のためにEUから600万ユーロが拠出されることが決定したことの発表があった。
ウクライナでは、旧ソ連崩壊後、旧ソ連軍の1000万発以上の地雷を貯蔵することとなったが(多くはPFM-1という型で、貯蔵期限が切れている)、今年5月にウクライナ議会が対人地雷禁止条約(オタワ条約、1999年発効)を批准したため、地雷廃棄が必要となっている。






