25か国中21か国が条約違反:欧州委員会が条約侵害手続を進行
欧州委員会は、中央ヨーロッパ時間7日、多くの加盟国に対する条約侵害手続(Vertragsverletzungsverfahren)を進行させた。条約侵害手続は、加盟国が欧州共同体条約等の条約規定に違反している場合に、行われる手続。欧州委員会のイニシアティヴによるものと、加盟国のイニシアティヴによるものの二つがあるが、欧州委員会のイニシアティヴによるものがほとんどで、今回も前者の手続。手続は多段階に亘り、加盟国による違反が長引けば長引くほど厳しい措置がなされていき、最終的には加盟国に対して強制金等が課せられる仕組みになっている。
今回の手続では、テレコミュニケーションの分野で、チェコ、ギリシア、フランス、ハンガリー、ラトヴィア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロヴァキア、スロヴェニア、フィンランドの11か国が対象となったほか、自動車の登録証(Zulassungsbescheinigungen)のEU統一規格の導入については、デンマーク、ルクセンブルク、ポルトガル、キプロス、チェコの5か国が対象となった。自動車課税では、ギリシア、オランダ、ポーランドの3か国が対象となった。今年1月1日から義務付けられたスピード制限装置(旅客運送車については最高時速を100キロメートルに制限、3.5トン以上の物品運送車については最高時速を90キロメートルに制限)については、チェコとアイルランドが対象となった。農薬に関しては、フランスが対象となった。公益企業の透明性に関しては、スウェーデン、オーストリア、チェコが対象となった。また、付加価値税に関してイタリアとポルトガルが対象となった。また、欧州司法裁判所の判決に従っていないという理由で、オランダとスペインが対象となった。
合計で21か国が対象となっており、今回条約違反の譴責を受けなかったのは、ドイツ、ベルギー、連合王国、エストニアの4か国のみだった。
欧州委員会のイニシアティヴによる条約侵害手続は、概ね、次のような経過を辿る:まず、第一段階として、欧州委員会が加盟国に対して催告を行う。加盟国が欧州委員会の催告に従わない場合には、第二段階として、欧州委員会が理由を付した意見(アヴィ・モティヴェ)を送付する。それでも加盟国が従わない場合には、第三段階として、加盟国に対する訴訟を提起する。欧州司法裁判所の判決が出され(第四段階)、加盟国が敗訴してもさらに従わない場合には、もう一度欧州委員会が催告する(第五段階)。それでもまだ従わない場合には、もう一度アヴィ・モティヴェを送付する(第六段階)。それでも従わない場合には、再び欧州委員会が訴訟を提起する(第七段階)。加盟国が再び敗訴した場合には、強制金などが課せられる(最終段階)。
このように、加盟国には何度となく是正の機会が与えられているが、特に指令(Richtlinien)の国内法転換の場合には、国内議会の状況などにより何年も放置される場合があり、最終段階にまで至る事例も意外に多い。
今回譴責の対象となったのは、次の点:
〔テレコミュニケーション関係〕
- 電話会社を変えた場合に電話番号を継続して使用できる制度の未整備:チェコ(第一段階)、ラトヴィア(第二段階)、ポーランド(第二段階)、スロヴェニア(第一段階)。
- 電話帳・番号案内の未整備・不完全:チェコ(第一段階)、フランス(第一段階)、ギリシャ(第一段階)、ラトヴィア(第一段階)、リトアニア(第一段階)、マルタ(第一段階)、ポーランド(第一段階)、スロヴァキア(第一段階)。
- ユニヴァーサル・サーヴィス提供企業の選定の瑕疵、その他の競争法関係の問題:ハンガリー(第一段階)、フィンランド(第一段階)、スロヴェニア(第一段階)。
- 欧州統一緊急番号「112」の未整備:ポーランド(第二段階)。
- 規制庁の独立性の欠如:フィンランド(第一段階)。
〔自動車関係〕
- 欧州統一規格の車両登録証の未整備:デンマーク(第二段階)、ルクセンブルク(第二段階)、ポルトガル(第二段階)、キプロス(第二段階)、チェコ(第二段階) 旅客運送者のスピード制限装置の未整備:チェコ(第二段階)、アイルランド(第二段階)
- 自動車課税における中古車の価値減少の算定方法の問題:ギリシア(第二段階)
- 他の加盟国で登録済の自動車に対する自動車登録税の徴収:オランダ(第二段階)
- 自動車登録の際に徴収される消費税の問題:ポーランド(第一段階)
〔その他〕
- スロヴァキアから輸入される農薬の許可をフランス当局が取り消した件:フランス(第二段階)
- 付加価値税:イタリア(第三段階)、ポルトガル(第三段階)
- 公益企業の透明性:オーストリア(第二段階)、チェコ(第二段階)
- 欧州司法裁判所2004年7月15日判決(事件番号C-141/03)に従っていない件(公益企業の透明性):スウェーデン(第五段階)
- 欧州司法裁判所2004年10月14日判決(事件番号C-299/02)に従っていない件:オランダ(第五段階)
- 欧州司法裁判所2003年5月13日判決(事件番号C-463/00)に従っていない件:スペイン(第六段階)
〔用語解説〕

