EUエネルギー:ドイツ・ロシア間のガスパイプライン合意、原油価格高騰への対応
欧州委員会のプレス・通信総局のフランソワーズ・ル・ベイユ(Françoise le Bail)副総局長は、中央ヨーロッパ時間15日、記者団に対し、EU内の対立の原因ともなっているドイツ・ロシア間のガスパイプライン計画について、歓迎する意向を示した。
独露ガスパイプラインの契約は、中央ヨーロッパ時間8日に、ドイツのシュレーダー首相、ロシアのプーティン大統領の臨席の下、ロシアのガスプロム社(Gasprom)と、ドイツのBASF社とE.ON社の間で締結された。保有率は、ガスプロム社が51パーセント、BASF社が24.5パーセント、E.ON社が24.5パーセントとなっており、独露の保有率比は49対51となっている。なお、E.ON社の子会社であるルールガス社(Ruhrgas)は、ガスプロム社の株式を6.5パーセント保有している。
このガスパイプラインは、ロシアのヴィボルク(Wyborg。サンクト・ペテルブルク近郊)からドイツのグライフスヴァルト(Greifswald)に向けて敷設されるパイプラインで、全長約1200キロメートル。陸上ではなく海底に敷設されるため、バルト海を通じて直接独露間を結ぶパイプラインとなる。このため、ロシアとドイツの中継地となってきたポーランドやバルト三国が猛反発。ポーランドのマレク・ベルカ首相は、政治問題化もあり得るとの構えを見せているが、シュレーダー首相は、このパイプラインは「誰かに対抗するという趣旨のものではない(gegen niemanden gerichtet)」と一蹴した。
エネルギー関連のロシアからのパイプラインとしては、1964年に操業を始めたドルジバ・パイプラインがある。これは、ベラルーシで枝分かれし、一方はポーランドを経由してドイツに至り、他方はウクライナ・スロヴァキアを経由して、さらに枝分かれしてチェコ・ハンガリーに至るものである。もともとは旧コメコン諸国にエネルギーを供給するためであったが、1970年代からは西欧にも供給されている。
EU側では、欧州横断天然ガスパイプライン(TENP = Transeuropäische Naturgas-Pipeline)があり、ロシアからのガスと連合王国(北海油田)からのガスを搬送している。
ドイツでは、天然ガスの消費量は年々増加しており、1973年に50万テラジュール(TJ)余りだった消費量は、2004年には350万テラジュール近くまで増加している。ハイツング(Heizung)と呼ばれるドイツのセントラルヒーティングシステムの約半数はガスによって運転されている(ドイツは冬が長いので、ハイツングの使用期間も長い)。また、新築住宅の4分の3までがガス式のハイツングを導入しているともいわれる。また、天然ガスは、火力発電に使用される。
パイプラインは今秋から建設がはじまり、2010年から操業開始の予定。最初は年間275億立方メートルが搬送され、最終的には年間500億立方メートルが搬送されることになる。現在、ドイツのロシアへのガス依存度は31パーセント(2002年現在)となっているが、これにより、ロシアへのガス依存度は40パーセント程度まで高まるものと見られている。
2002年現在のドイツの天然ガス輸入元は、1位がロシアで31パーセント、2位がノルウェーで25パーセント、3位がオランダで19パーセントとなっている。また、自給率は18パーセントとなっている(そのほとんどはニーダーザクセン州とシュレースヴィッヒ=ホルシュタイン州で採掘される)。
なお、ロシアは、EUへの石油供給では第二位の座を占めており(7億1000万バレルで、全体の22.5パーセントを占める。2002年)、第一位のノルウェー(7億2300万バレル、22.9パーセント)との差は僅差である。三位以下は、サウディ・アラビア(11.2パーセント)、リビア(7.9パーセント)、イラン(5.2パーセント)、ナイジェリア(4.0パーセント)、シリア(4.0パーセント)、アルジェリア(3.4パーセント)と続く(いずれも2002年)。
今回の独露パイプライン敷設合意により、独露間のパートナーシップはさらに強化されるものと見られる。また、同パイプラインには、連合王国も興味を示していることを、同国のマルコム・ウィックス(Malcolm Wicks)エネルギー大臣が明らかにした。
今回の欧州委員会の発言は、高騰するエネルギー価格などにも鑑み、パイプラインが欧州全体の経済に良い影響を与えるとの判断のもとに、独露間のパートナーシップがさらに強化されることを容認する意味をもつものと見られる。
〔原油価格高騰に対応するための五箇条計画の策定〕
欧州委員会は、中央ヨーロッパ時間6日、原油価格高騰に対応するための五箇条計画(Five-point plan to react to the surge in oil prices)を発表した。世界経済は、原油価格の高騰により、深刻な影響を受けており(デルタ航空とノースウェスト航空の破綻はその一例)、その事情はEUでも同じである。
原油価格は、2002年1月には1バレル当り25米ドル程度だったが、2005年1月には1バレル当り45米ドル程度まで上昇し、現在は1バレル当り70米ドル程度で取引されている。すなわち、3年半余りの間に、3倍近くまで価格が上昇したことになる。
欧州委員会は、価格高騰の原因として、需給のバランスが崩れている(一日240万バレル程度の需要に対し、一日200万バレル程度の供給しかない)こと、この分野の投資が少ないこと(投資がないと供給が増えない)、中東情勢が不安定であること、投機買いが行われていることを挙げている。
以上のような分析の下に、次のような五箇条計画が策定された:
- エネルギーの需要を削減する(Reducing demand for energy):建物エネルギー効率性指令(Richtlinie über die Energieeffizienz von Gebäuden)やエコデザイン指令(Ökodesign-Richtlinie)、今年6月に出されたエネルギー効率性緑書(Grünbuch über die Energieeffizienz。緑書とは、法案の構想を示したものである)などと方向性を同じくするものである。
- 原油以外のエネルギー形態への依存を強める(Increase reliance on other forms of energy):風力発電、波力発電、太陽発電、バイオ燃料(bio-fuels)などを念頭においている。
- 原油市場の透明性と予見性を高める(Increase transparency and predictablity of oil markets):投機買いを健全化させる目的を持つものである。
- 原油とガスの供給を増強する(Increase the supply of oil and gas)
- 緊急事態に効果的に対応する(石油備蓄関連)(React effectively to emergency situations with respect to oil stocks)