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2005年09月19日   ドイツ情勢

ドイツ連邦議会総選挙:意外な結果、大連立が濃厚、多数派工作がカギに

中央ヨーロッパ時間18日、ドイツの連邦議会総選挙の投票が、午前8時から行われた。投票は、午後6時に締め切られ、開票が行われた。

選挙前には、野党キリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟(CDU/CSU)が与党社会民主党(SPD)を大きく引き離して第一党に躍進する公算が高いというのが大方の予想で、CDU/CSUと自由民主党(FDP)が過半数を確保できるかが焦点とされていたが、実際の結果は、これとはまったく異なる意外なものとなった。

すなわち、二大政党がともに後退し、CDU/CSUが225議席(23議席減)、SPDが222議席(29議席減)となった。FDPは躍進したものの、CDU/CSUとFDPを足しても286議席にしかならず、過半数の300議席には到底届かないという結果となった。特に、直前の世論調査でCDU/CSUは43パーセントから45パーセント程度の得票があると予想されていただけに(実際の得票は35.2パーセント)、(一応勝利コメントは出したものの)惨敗感が大きかった。これにより、当初有力と見られていた初の女性首相の誕生(アンゲラ・メルケル女史の連邦首相就任)も、雲行きが怪しくなってきている。

19日0時35分のデータによれば、選挙結果は次の通り:

政党得票率議席数
キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU/CSU) 35.2% (- 3.3%) 225 (- 23)
社会民主党(SPD) 34.3% (- 4.2%) 222 (- 29)
自由民主党(FDP) 9.8 % (+ 2.4%) 61 (+ 14)
左派政党(Linkspartei) 8.7 % (+ 4.7%) 54 (+ 51)
緑の党(Grüne) 8.1 % (- 0.5%) 51 (- 4)

見て分かるように、この意外な結果の原因は新党左派政党の大躍進にある(本紙では、左派政党が今回の台風の目になると繰り返しお伝えしてきた)。

旧ドイツ民主共和国(東ドイツ)の独裁政党であったドイツ社会主義統一党(SED = Sozialistische Einheitspartei Deutschlands)の後身がグレゴール・ギージー(Gregor Gysi)率いる民主社会党(PDS = Partei des Demokratischen Sozialismus)であったが、この政党は、年々支持者を減らしていた。前回の選挙では比例選挙で5パーセントを割り込み、ついに比例議員を出せなくなるほどに衰弱していた(ドイツの選挙法は、小党分立を避けるため、5パーセント以下の政党を排除する規定を置いている)。

ドイツでは、日本と異なり、比例選挙で政党間の議席配分が決まってしまうため(小選挙区選挙はこれを微調整する程度の意味しか持たない)、比例代表による議員が出せないことは、国政レベルでの政党の死滅と言ってよい現象であった。

しかし、今回の選挙で、これに、オスカー・ラフォンテーヌ(Oskar Lafontaine)元連邦財務大臣(元ザールラント州首相)率いるSPD左派が合流して、「左派政党」(Die Linkspartei)と党名を改称して選挙に臨んだ(厳密に言うともう少し複雑なプロセスだったが、余り重要な論点ではないのでここでは説明を省く)。

多くの有権者が既存の政党に対して失望感を持っていたこともあり、この左派政党は、当初の予想以上の好評を博した。

これにより、左派政党は5パーセントを軽々超え、第四党(連立与党の緑の党を上回った)として比例代表議員を出せることになったため(前回は一桁の小選挙区議員しか出せなかった)、大幅に躍進することになったのである(前回比51議席増の54議席)。これは、選挙制度に起因する一種のトリックといえる。

なお、左派政党の選挙手続には手続上問題となる点もあり、これを根拠に選挙訴訟(選挙を無効にする訴訟)を起こそうという動きもあるが、実際に訴訟が起こされるか否かも含め、現時点では明らかになっていない。

また、連邦議会の最右派(極右ではない)のFDPも躍進したことから、今回の選挙で躍進したのは議会の最右翼と最左翼であり、中道勢力は後退したと総括することができるだろう。もっとも、ドイツでは、共産党やナチのような左右両極端の政党は憲法(基本法)で禁止されているわけであるが(もっとも、いわゆるネオナチ系の政党が十分に取り締まられていないきらいはある)、それでも、他の欧州諸国の政治のポピュリズム化傾向が、ドイツの政治にも若干の影響を与えている可能性はある。

その他、当初かなりの劣勢にあると見られていたSPDが、予想以上に健闘したことから、無党派層の票がかなりSPDに流れたものと見られる。選挙前の世論調査によれば、四分の一の有権者が、まだどう投票するかを決めていないと答えていた。

地域別に見ると、小選挙区を制したのは、北部でSPDの候補が多く、南部でCDU/CSUの候補が多かった。

〔今後の政局〕

今後の政局の展開としては、CDU/CSU(黒)とSPD(赤)の大連立という可能性が最も有力であると見られている。しかし、それが本当に実現するのか、そして、その場合には、誰が首相になるかを含め、何も確定していない。閣僚の配分などもまったく未知数である。

大連立の場合、数の論理からいけばメルケル党首が首相に就任するのが順当といえるが、場合によってはシュレーダー首相の続投も十分にありうる(かつて日本では自民党と社会党が連立を組み、村山富市氏が首相に就任した例がある)。選挙前の世論調査ではシュレーダー首相が首相に適するとの回答がメルケル党首に較べて大きく上回っていたこともあるが、「勝ち戦を負けた」メルケル党首が党内で求心力を失い、「負け戦を善戦した」シュレーダー首相が党内で求心力を高めるという事情もある。

また、その他の第三者という可能性も全くないわけではない。もっとも、各党とも、前述の二人に「首相候補」と銘打って選挙戦を戦った以上、それ以外の第三者を立てるにあたっては、有権者に対してしかるべき正当化根拠を提示する必要がある。

他には、SPD(赤)・FDP(黄)・緑の党の「信号機連立(Ampelkoalitiion)」や、SPD(赤)・左派政党(赤)・緑の党の「赤赤緑連立」なども取り沙汰されているが、いずれも構造的な問題を抱えているため、実現の可能性は低いと見られている(もっとも、可能性がないわけではない)。

大連立になった場合、外交的には、米英がCDU/CSUを、仏露がSPDを推していたため、CDU/CSUとSPDがこれだけの僅差での連立となると、外交的な戦略がかなり立てにくいものと思われる。もっとも、玉虫色の状況を積極的に活用し、米英・仏露の双方と良好な関係を築く可能性もあるが、いずれにせよ未知数である。

また、トルコの加盟問題についても、両党の主張はまったく方向性が異なっている。もっとも、この問題については、EUレヴェルで加盟の方向で話が進んでいるため、大連立となれば、ドイツが積極的に反対を主張することはなくなるものと見られるため、トルコ加盟の方向で進んでいくと見られる。

内政的にも、両党の主張は異なっている部分が多く、特に税制については両党の合意が可能となるかどうかが焦点である。逆に、社会保障については合意は比較的容易であろう。

しかし、両党のすり合わせさえできてしまえば、連邦議会(Bundestag)、連邦理事会(Bundesrat、連邦参議院)の双方で圧倒的な多数を保持しているので、法案を通すのは簡単である。

実は、これまでも、連邦議会ではSPD・緑の党の連立が多数を握り、連邦理事会ではCDU/CSUが多数を握るという(フランスの政治で言うコアビタシオン的な)状況だったのであり、見方によっては、現在と余り変わらない(というより、現在の政治状況がそのまま連邦議会に反映された)と見ることもできよう。

しかしながら、理念のない大連立は、中道政党に対する有権者の更なる失望感を惹き起こすおそれもあり(もっとも、経済が劇的に好転すれば別である)、次回の選挙でドイツの政局はさらに混迷を増す可能性もある。

なお、ドレスデン1区の小選挙区候補者(国民民主党(NPD = Nationaldemokratische Partei Deutschlands。極右政党の一つ)所属の候補)が急死したため、同区では選挙が2週間延期となっており、最終的に連邦議会の議席が確定するのは2週間後となる。

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