2005年10月04日 EU外交・安全保障

トルコのEU加盟交渉始まる:オーストリアは妥協、クロアティアも加盟交渉開始可能に

欧州連合(EU)は、中央ヨーロッパ時間3日、ルクセンブルクでトルコとの加盟交渉を開始した。昨年12月の欧州理事会(加盟国首班と欧州委員会委員長により構成)により、トルコの加盟交渉開始は10月3日(この日は、ドイツの統一記念日でもある)と決定していたが、最近になってオーストリアが交渉目標を「トルコのEU加盟」から別の文言に変更すべきだ(つまり、トルコのEU加盟を目標として明記すべきではない)と主張したため、2日から20時間以上にわたり、加盟国の外務大臣間の協議が行われていた。

結局、オーストリアのウルズラ・プラスニク外務大臣が折れて、「EU側の受容能力(Aufnahmefähigkeit)」をトルコのEU加盟の条件とするよう文言を変更することで妥協し、交渉目標には「トルコのEU加盟」が明記されることとなった。

この騒動により、当初午後5時から予定されていた記念式典は大幅にずれ込んだ。加盟国間の協議がまとまってからトルコのギュル外務大臣がルクセンブルクに向かったため、EU理事会議長国(連合王国)のジャック・ストロー外務大臣がギュル外務大臣を迎えたのは0時を回る直前であった。

なお、ドイツのCDU・CSUの連邦首相候補であるアンゲラ・メルケル党首も、選挙期間中に、トルコのEU加盟に対する反対論を展開し、それよりも弱い関係である「特権的パートナーシップ(privilegierte Partnerschaft)」を主張していた。しかし、ドイツの総選挙後2週間以上経過したが、連立交渉がまったく進んでおらず、誰が首相になるかすら決まっていない状況である。したがって、ひきつづき従来のSPD・緑の党の連立政権(トルコのEU加盟に賛成)が継続しており、ドイツもトルコのEU加盟に賛成した。

〔クロアティアの加盟交渉開始が可能に〕

この機会に、旧ユーゴスラヴィア戦争犯罪法廷のカルラ・デル・ポンテ(Carla del Ponte)検察官団長は、クロアティア政府が戦争犯罪法廷に協力していると述べ、これによりクロアティアのEU加盟交渉が始まる前提が整った。

クロアティアのEU加盟交渉は今年3月に開始の予定であったが、戦争犯罪法廷に協力していなかったために、白紙となった(クロアティアは、旧ユーゴスラヴィア連邦の国である)。しかし、今回戦争犯罪法廷への協力が立証され、再び加盟交渉が始まる見通しとなった。