EU加盟国とのヴィザ相互免除問題:合衆国・カナダ・オーストラリアは解決の見込み立たず

© European Community, 2006
欧州委員会が10日にまとめ、13日に法務・内務理事会に提出した報告書(欧州委員会2006年3号確定)により、アメリカ合衆国・カナダ・オーストラリアの3か国が、一部のEU加盟国の市民に関して、ヴィザ(査証)の相互免除を履行していない問題について、解決の見込みが立っていないことが明らかとなった。
国際社会においては、国家間の関係は主権平等の原則を基調とするため、通常、国家間の取り極めにおいては、相手国と相互に同程度の恩恵を与え合うことになっている。これを、相互の保証(相互性、レシプロシティ)といい、判決の執行や査証免除など、あらゆる場面で問題となる。相互性がない場合の典型は、いわゆる「不平等条約」である。
先進諸国などの間では、短期滞在に関してヴィザを相互に免除することが一般的となっており、日本も、すべてのEU諸国と短期滞在ヴィザを相互免除している(長期滞在は別論である)。
欧州委員会によれば、ヴィザの相互性に問題を抱える相手国のうち、コスタリカ、ニカラグア、パナマ、ベネズエラの4か国については、これらの国々が90日の短期滞在について査証義務を撤廃したため、相互性が保証され、問題は解決したとされる。
また、ブラジル、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ウルグアイについても、解決の見込みがついているという。
これに対し、合衆国・カナダ・オーストラリアの3か国については、解決の目途は立っていないとされている。しかしながら、EU側はあくまで対話を重視していく考えで、今のところ、3か国の国民に対する短期滞在査証の要求などの強硬措置はとるつもりはないとしている。
〔合衆国〕
報告書によれば、チェコ、ギリシャ、エストニア、キプロス、ラトヴィア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロヴァキアの10か国の国民については、合衆国の入国にあたって査証義務が課せられているという。
合衆国では、1986年の移民改革統制法(Immigration Reform and Control Act)により、査証免除プログラム(VWP = Visa Waiver Program)が採用され、2000年の永久査証免除プログラム法(Visa Waiver Permanent Program Act)によりそれが恒久化された。
関係国が合衆国の査証免除プログラムに参加するには一定の要件が必要であり、現在査証免除プログラムに参加しているのは27か国とされる。しかし、上記10か国については、合衆国の査証免除プログラムの要件をみたす見込みがなく、現在のところ、これら10か国が査証免除になる見込みはまったく立っていない。また、2001年の911テロの影響で、合衆国下院が要件を緩和する見込みもないという。
両者の間で幾度となく協議が行われ、解決に向けた努力が相互に行われているが、根本的な解決には至っていない。
〔カナダ〕
報告書によれば、チェコ、エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキアの7か国の国民について、カナダへの入国にあたって査証義務が課せられているという。
カナダにおいては、査証免除の要件については法定されておらず、行政が一定の客観的基準に基いて国ごとに判断している。
カナダの当局(CIC = Citizenship and Immigration Canada)は、2004年に査証免除の見直しを行い、当該7か国にも質問票を送付して回答を受け取ったが、2005年に当局が発表したところによれば、結局どの国も査証免除とならなかった。
〔オーストラリア〕
報告書によれば、現在、オーストラリアに入国するすべての外国人(オーストラリア国民でない者)には、査証義務が課せられている(ニュージーランド国民には特例がある)。但し、査証の電子申請も可能で、国によりETA(Electronic Travel Authority)又はeヴィザ(eVisa)により査証が取得できることとなっている(日本はETA)。
ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、イタリア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィンランド、スウェーデンの14か国については、ETAで済む。なお、EU非加盟国であるアイスランドとノルウェーについても、ETAで済む。
これに対し、チェコ、エストニア、キプロス、ラトヴィア、リトアニア、ハンガリー、ポーランド、スロヴェニア、スロヴァキアの9か国については、eヴィザの取得が課せられている。
オーストラリア側は、これらの国々にeヴィザの取得を要求している理由として、申請の際に偽造書類が持ち込まれる例が多いことや、オンラインシステム上の問題、申請拒否事例が多いことなどを挙げている。