2006年02月21日 EU教育・青少年
EU全土で企業家精神を育成/欧州委員会
欧州委員会は、中央ヨーロッパ時間13日、EU全土の教育機関において企業家精神(Unternehmergeist)を育成するよう、勧告を行った。欧州委員会は、現在、学校や大学などの教育機関において、企業家精神がほとんど涵養されていないことに危機感を抱いている。
18世紀の産業革命(特に蒸気機関の発明)以来、工場における大量生産が可能となるとともに、交通機関が発達して輸送が容易となったことにより市場が拡大し、大量消費が可能となった。このため、産業形態として大量の労働力を集約することが不可欠になり、一部の企業家(資本家)が大量のサラリーマン・労働者を雇用する形態の資本主義が発達した。
ところが、20世紀の後半にコンピュータが発明されるとともに、通信網・運輸網の発達により世界的な通信・運輸が容易になると、生産手段の集中が不要となって企業規模を縮小する(リストラ)必要が出てきた一方、市場がさらに拡大することにより従来の大量生産・大量消費の対象とならなかった商品も商品価値を持つようになった(市場の多様化)。
その結果、現在においては、労働者が大幅に余る(失業率の慢性的な高止まり)とともに、企業家が大幅に不足するという現状となっている。このような現状には、企業家から命じられた仕事を的確にこなす能力を備えたサラリーマン・労働者ばかりを育成し、創造性・責任感を持った企業家を育成してこなかった教育のあり方にも責任がある。例えば、全員に一様に同じ正解を要求するような教育方法は、まさに19世紀的な教育のあり方の典型といえる。
欧州委員会は、このような過去の教育のあり方を改善する必要を踏まえて、21世紀にEUの経済成長が継続していくためには、「最も早い幼少の時期から(von frühster Kindheit an)」企業家精神を育んでいく必要があるとしている。
今回の勧告は、EUの理事会・欧州議会・経済社会委員会・地域委員会に対してなされた(欧州委員会2006年33号確定)。欧州委員会が勧告した措置は、大きく分けて、総論・学校教育・大学教育の三つに分かれる。
総論においては、すべての教育機関において、企業家的な思考や行動を育むことが、授業カリキュラムにおいて明確な目標として掲げられるべきこと、そのために、中央官庁・地方官庁が、各部門が協力するように取り計らうことが勧告されている。
学校教育(初等・中等教育)については、(1)学校が実務の支援と刺戟を受けるべきこと、(2)教師が、企業家精神を育成するために必要な素養を、再教育(Aus- und Fortbildung)を通じて得るべきこと、(3)教育機関と地元社会の間での協力が促進されるべきこと、(4)学校でのミニ企業(Miniunternehmen)の設立が促進されるべきことが勧告されている。
大学教育(高等教育)については、(1)大学の課程に企業家的な思考や行動を育成するカリキュラムを組み込むこと、(2)大学の教官がそのような指導ができるように、官の助成により教官に再教育(Weiterbildung)の機会を与えること、(3)産学間の人材交流を促進することを勧告している。
