2005年04月16日 EU外交・安全保障

EU外相会談:中国への武器輸出解禁は見送り

中央ヨーロッパ時間15日、EUの2005年前半の議長国であるルクセンブルクにおいて、非公式のEU外相会談が行われた。会談は16日まで行われるが、懸案となっている中国への武器禁輸措置の解除については、見送りとなった。欧州の多数のメディアが報じた。

対中武器禁輸措置の解除については、14日にストラスブールの欧州議会が反対決議を行ったほか、その後、アメリカのコンドリーサ・ライス国務長官が「誤ったシグナル」を中国に与えるとして警告、さらに、ニコラス・バーンズ(Nicolas Burns)国務次官が合衆国の「根本利益に対する直接の挑戦」と激しく非難するなど、内外からの批判が相次いでいた。

近年、EUと中国は経済的な関係が強まっているが、中国による台湾海峡へのロケット砲の配備や「反国家分裂法」の制定による台湾の威嚇に基づく中台関係の緊張、さらには、尖閣諸島の侵略、中国軍事潜水艦による日本領海侵犯、暴徒による日本関連施設へのヴァンダリズム(破壊行為)や日本人への暴行等による日中関係の緊張、さらには一向に改善しない中国の人権状況・民主化状況、国連人権規約の未批准、大量の死刑(銃殺刑)執行などにより、現下の状況では、中国への武器禁輸措置の解禁は不可能と判断した模様だ。

今回の非公式外相会談では、ルクセンブルクのジャン・アッセルボルン(Jean Asselborn)外務大臣が議長をつとめている。15日の話し合いでは、武器禁輸措置だけではなく、対中外交戦略一般について意見が交換された模様。

アッセルボルン外相は、議長国の立場から、欧州理事会の決議を維持する方向で議論を検討したが、「コンセンサスが成立していないことは明らか」として、対中禁輸解除を見送った。

ベニータ・フェッレーロ=ヴァルトナー(Benita Ferrero-Waldner)外交安全保障政策担当欧州委員も、「早急の決定は絶望的」と述べ、6月末までの妥結はきわめて困難な情勢であるとの見通しを示した。

会談に参加したドイツのヨシュカ・フィッシャー(Joschka Fischer)外相も、会談の結果「まだ合意には達していないことが示された」とし、「時間がかかるだろう」との見通しを示した。

また、フィッシャー外相は、「北京側の動き方にかかっている」と述べ、中国側が、台中・日中関係の改善や、人権状況の改善などを行った場合には、武器禁輸措置も再び俎上に上ることもありえるとの見方を示した。

この点について、複数のメディアは、武器禁輸の解除が再びEU外相会談のテーマになるのは、「早くて2006年」であるとの外交筋の見方を紹介している。

なお、フィッシャー外相は、平和・人権・環境等をスローガンに掲げる緑の党の重鎮であり、武器禁輸解除問題については、推進派の社会民主党(SPD)のシュレーダー首相とは意見の相違があると伝えられている。

中国に対する武器禁輸措置は、1989年に、天安門事件(天安門に終結した民主化運動を行う多数の学生を、人民解放軍が殺戮した事件)を批判するために、欧州諸共同体により導入されたもので、現在でも依然として有効。

近時、ドイツのゲアハルト・シュレーダー(Gerhard Schröder)首相と、フランスのジャック・シラク(Jacques Chirac)大統領を中心として、対中武器禁輸を解除する方向で政治的検討が行われ、昨年12月の欧州理事会では、2005年の6月末までに解除することが了承された。

しかし、人権擁護や平和主義を理由とするヨーロッパ域内からの反対のほか、日米を中心に、外交的にも懐疑論・反対論が根強い。5月に訪米を予定しているEUの共同外交安全保障政策上級代表であるハビエル・ソラナ(Javier Solana)氏も、「EUは武器禁輸措置を解除するが、実際に武器を輸出したいとは思わない」との苦しい弁明を行わざるをえないだろうとの予測が、複数のメディアで報じられている。

EU内でも、対米関係を重視するイギリスを中心として、反対論が根強い。