2005年11月01日 EU知的財産権

欧州共同体商標:「MOBILIX」と「OBELIX」に混同のおそれなし―欧州第一審裁判所

欧州第一審裁判所(EuG。欧州司法裁判所の下級審)=ルクセンブルク=は、中央ヨーロッパ時間10月27日、欧州連合域内市場調和庁(OAMI = Oficina de Armonización del Mercado Interio)=スペイン・アリカンテ=に登録された欧州共同体商標「MOBILIX」につき、欧州の人気マンガ『アステリクス(Astérix)』のキャラクター「オベリクス(Obélix)」と取引上混同されるおそれはないとして、訴えを棄却した。

『アステリクス』は、フランスの漫画家アルベール・ユデルゾ(Albert Uderzo)とルネ・ゴシンニ(René Goscinny)により描かれているロングセラーのマンガで、欧州各国の子どもたちに人気がある。アステリクスには、「オベリクス」というキャラクターが登場する(外部リンク画像参照)。

コペンハーゲン(デンマーク)のオレンジ匿名会社(Orange A/S)は、1997年に「MOBILIX」の商標出願を行った。携帯電話のオレンジ・グループは、もともと連合王国の企業であるが、ドイツのマンネスマン株式会社(Mannesmann AG)に買収された(さらに、マンネスマンは、ボーダフォンに買収された)あと、フランステレコムに買収された。

欧州連合の域内市場調和庁における審査の結果、オレンジA/Sの出願のうち、二つの指定商品・役務を除いて、域内市場調和庁に欧州共同体商標として商標登録された。

しかし、『アステリクス』の出版元であるパリのアルベール・ルネ出版匿名会社(Les Éditions Albert René S.a.r.l.)は、「MOBILIX」は「OBELIX」にきわめて類似しているとして、域内市場調和庁に対する商標訴訟を第一審裁判所に提起していた(事件番号:2003年T-336号)。

第一審裁判所は、「MOBILIX」と「OBELIX」は、第二音節と第三音節の音が類似しており、しかも、ともに欧州連合加盟国のいかなる言語でも意味を持たない単語である(したがって、意味上は区別できない)として、若干の類似性を認めたものの、「MOBILIX」は「動くもの・こと(etwas Mobiles oder Mobilität)」というイメージが先行するのに対し、「OBELIX」については、取引において「欧州連合のすみずみまで知られているマンガシリーズの肥満のヒーロー(der korpulente Protagonist aus der überall in der Europäischen Union bekannten Cartoonserie)」がすぐに思い浮かべられると指摘し、結局のところ、公衆において混同されるおそれは著しく少ないと判示した。

以上の理由により、アルベール・ルネ出版社の訴えは棄却された。但し、同社は欧州司法裁判所に控訴することもできる。